体験記

【古伝体術】静岡で唯一の稽古場「なるほどう」の魅力とは?|体験取材

古伝体術とはいかなるものなのか?

武術未経験のフリーライターである筆者(エンモジラボ)が、古伝体術を教える【なるほどう】を体験取材しました。

【なるほどう】の稽古場・観山中学校

静清バイパス下りの千代田上土ICを降りて新東名高速道路の新静岡IC方面へ。

高速道路へ続く道の側道に入り、ひとつめの信号を左折。のどかな田園風景のなかを進むと、目的地である観山中学校が見えてきた。

「意念」と「身体操作」で相手を腑抜けにし、軽く触るだけで相手を倒せてしまうという古伝体術の稽古が、毎週金曜日の19時から21時の間、観山中学校の格技場で行われているという。


稽古の主催者である【なるほどう】のサイトで古伝体術について読んだ、武術未経験である私のイメージは、テレビで時々やっている、触れただけで相手が倒れる技。そういうのを見るたび、「触れるだけで相手が倒れるとか、まさかそんなわけがない。どうせヤラセだろ」と思う捻くれ者の私は、今回の体験取材に「倒せるなら倒してみろ」という気持ちで臨んでいた。


時刻は19時少し前。学校関係者の車か、古伝体術の先生や生徒の車か。複数台の車が停められている平面駐車場に駐車し、稽古場である格技場へ向かう。


「学校」という場所の敷地に入るのなんて何年振りだろうな、なんて考えながら歩いていたら、あっさりと格技場へ到着。明かりが漏れる両開きの扉を開けると、畳が敷き詰められた広い空間があった。


そこに、道着姿の眼鏡の男性が。

いざ!古伝体術を体験

「【なるほどう】の竹田です」


雰囲気で先生ではないかと思っていたら、案の定。竹田英良(ひでお)先生の優しそうな人柄に安心しながら、私も挨拶し、古伝体術について教えてもらうことに。


「相手の力に対して力で返すと、ぶつかります。でも、日常動作だと、ぶつからないんです」


「量子力学の話ですが、空間と調和して相手の波動を受け入れるんです。すると、相手は腑抜けになるから、少しの身体操作で動かせます」


説明を聞いても、よく分からない。量子力学とか、難しい話だ。それよりも、「倒してみろ」という意気込みで来ているので、実際に技をかけてほしいと思っていると、女性の生徒さんがやってきた。

 

「では実際にやってみましょうか」


きたきた! 三人で輪になり、「よろしくお願いします」と挨拶をする。そして、先生の指示で正座をすると、私の肩を生徒さんが後ろから押さえつけた。先生が「立ち上がってみて」と言うから立ち上がろうとしたが、生徒さんの体重がかかっているから立ち上がることができない。


「力と力がぶつかっているから、立ち上がれない。でも、普段正座の状態から立つときと同じように動いてください。正座から立つときって、一度頭が前にいきませんか?」


正座から立つときと同じように? こうか? 言われたとおり、正座から立つ普段どおりの動きをすると、生徒さんの手が離れ、すっくと立ち上がれた。なるほど、日常動作がぶつからないってこういうことか。


次に、立位で拳を上に向けた右腕を前に出す。「抵抗して」と言われたから、相対した先生が右腕で私の右腕を押してくるのに力を込めて抵抗し、倒されないようにする。


「これは力でぶつかり合っているから、倒せません。でも、空間と調和して相手を受け入れると、倒せます」


今度は私が先生の右腕を両手でがっちり握る。まさか。力には自信がある。倒されないぞ。取材に来る前の気持ちを思い出し、抵抗しようと力を入れたが――。


倒された。あれ? と思う間もなく尻もちをついている状態が不思議で、先生を見上げる。先生は笑っていた。やり方を変えて何回か技をかけてもらったが、不思議なことに私は一度も「抵抗」できず、やすやすと倒されたり引っ張られたりした。


なんとも摩訶不思議な。テレビでヤラセだと思っていたことが現実にあるなんて。


20時頃、男性の生徒さんが2人来て、私は稽古の様子を見させてもらうことにした。どの生徒さんも真剣で、お互いに技をかけあってはアドバイスをして、切磋琢磨している様子が見て取れた。


それでいて、先生は檄を飛ばしたり無理やり技をかけたりといったスパルタではなく、質問には丁寧に答え、手本を見せるなどして生徒に寄り添った指南をしていた。

【なるほどう】の原則は「ほぼ自由」

ときおり笑いが起こる終始和やかな稽古はあっという間に21時を迎え、開始と同様、全員で輪になって挨拶をして終了。


風を通すために開けられていた格技場の窓を手分けして閉め、帰り支度が整った人から解散。更衣室が格技場内にあるから、着替えも可能とのこと。


先生に本日のお礼を述べながら、生徒数や月謝について質問してみた。

「生徒は、2人から3人が毎回来ますが、休会者も含めればもう少しいます。月謝はひと月3千円。高校生まではひと月1千円です」


「【なるほどう】の原則は『ほぼご自由に』ですので、稽古時間の何時に来ても、何時に帰っても大丈夫です。欠席も問題ないですが、誰が来るか把握したいので連絡は欲しいですね」


にこやかに答える先生のゆるい原則が、真剣でも固くなりすぎない、楽しい稽古となっているようだ。


生徒が帰り、誰もいなくなった格技場に礼をし、扉の施錠をする先生の後ろ姿を見ながら、不思議な体験だったと本日の稽古を思い返していた。

静岡で唯一の稽古場

古伝体術は、創始者である中野由哲(よしのり)氏の開催以外だと、竹田先生の【なるほどう】でしか学べないという。


気になる方は、無料の体験稽古でぜひこの不思議な体術を味わってみてはどうだろうか。