体験記

アマナ心体操作術【なるほどう】とは?氣と身体操作の護身術|体験取材

「体術とかカッケー!」

「なにが起こるかわからない世の中、身を守る術を知っとくのって大事だー!」

とか思ってインターネットを検索していたら、たまたま見かけた「アマナ心体操作術【なるほどう】」。

「気功術」とか「身体操作」とか、なにそれ? サイトにあった説明を読んでもよくわからない。

だったら体験してみればいいじゃない! ということで、武術未経験の筆者、体験取材してきました。

【なるほどう】の稽古場・観山中学校

静清バイパス下りの千代田上土ICを降りて新東名高速道路の新静岡IC方面へ。高速道路へ続く道の側道に入り、ひとつめの信号を左折。のどかな田園風景のなかを進むと、【なるほどう】の稽古場である観山中学校が見えてきた。

アマナ心体操作術の稽古は、毎週金曜日の19時から21時の間、同中学校の格技場で行われているという。

時刻は19時少し前。広々とした平面駐車場に駐車し、格技場へ向かう。明かりが漏れる両開きの扉を開けると、畳が敷き詰められた広い空間に道着姿の男性の姿が。

「【なるほどう】の竹田です」

【なるほどう】の竹田英良(ひでお)先生だ。武術の先生と聞くと少し怖いイメージがあったが、優しそうな人柄に一安心。私も挨拶し、さっそくアマナ心体操作術について体験してみた。

体験①指で触れられただけで脱力

最初に体験したのは、「氣」で相手の腕の力を抜いたり入れたりする技。先生の指示で「T」の字になるように両腕を真横に伸ばした私に、「左指であなたの腕を触ると力が抜けます」と言う。

いやいや、そんなことないだろう。左指で触られるだけで脱力するなら、魔法の世界じゃないか。

いっとき筋トレしまくっていた私は、筋力には自信がある。まずは技を使わず、先生が片手で私の腕を上から押す。「抵抗して」と言われたから、腕が下がらないように力を込める。うん、下がらない。

「では左指で触ります」

先生がちょんと私の右腕を左指で触る。本当に一瞬触れられただけだ。

先生が私の腕を上から押す。下がるわけがないと思っていたら……あれ? あっさり下がったぞ。力が入らなかった。

驚く私に笑う先生。もう一度腕を上げるように言われ、「T」の字に戻ると、今度は右指で私の右腕をちょんと触る。腕を上から押されるが、今度は下がらない。力が戻ったようだ。

「左回りの氣の渦は緩ませて、右回りの氣の渦は締まるんですよ。左指が左回り、右指が右回りの渦なので、左で触れば力が抜けて、右で触れば力が入るんです」

そ、そうなんですか……。よくわからないけど、実際に体験したから信じるしかない。

しかし、「氣」のすごさはこんなものではなかった。

体験②肉体と霊魂がずれて脱力

次に、ファイティングポーズを取って立つように指示を受けた。とりあえず両腕を身体の前で構え、ボクサーみたいな体勢になる。

「押すので、抵抗してください」

絶対に押されないぞと、足も前後に広げて気合いを入れる。先生は私の握り拳を押すが、踏ん張っている私は動かない。

「人間は肉体と霊魂があります。あなたの周りの氣に働きかけて肉体と霊魂をずらすと、相手を脱力させられるんです。そういうイメージをしながら技をかけます」

れ、霊魂⁉ 急にスピリチュアルな話になったな。しかも、先生は私と距離を取って立っている。さっきみたいに触りもせず、イメージで脱力させるというのか。

困惑する私をよそに、先生は指を拳銃のように構える。銃口に見立てた指先を私に向けながら「えいっ!」と力強い声を発した。

先生が近づいてきて、私の拳を押す。身体が後ろに仰け反り、転ばないように慌ててバランスを取る。踏ん張っていたはずなのに、う、動いちゃった!

すごいと感じつつも、納得もしていた。なぜなら、先生が「えいっ!」と声を発したとき、私の周りの空気が振動した気がしたのだ。あれが、肉体と霊魂がずれる感覚だったのだろうか。

体験③「氣の共感」で相手を動かす

なんとなく「氣」のすごさがわかってきたところで、今度は「氣の共感」で相手を自由自在に動かすと先生は言う。

脱力させるのではなく動かすということは、相手を操るってこと? どうやって?

疑問符が頭に浮かぶ。同時に、まさかそんなことと、疑念も抱く。疑い深いなぁ私は。

先生の指示で、両手の平を下に向けた状態で前に出す。先生も自分の両手を出し、手の平を合わせる。

「氣の共感は、相手の手の温かさ、湿り気、触感などを意識することで、つながります。相手を感じてください」

言われたとおり、先生の手の温度や皮膚の触感に意識を向けてみる。温かいなぁなんて感じていたら、先生が後ろに下がった。先生の手の平に私の手の平がくっついたかのように、私も先生の動きに合わせて前に進む。え、操られた⁉

驚いて先生の顔を見上げると、「これが氣の共感です」と。「氣」で本当に相手を思いのまま動かせてしまうなんて……。「氣」の世界でも「共感」って大事なんだな。

体験④言霊の力

続いて先生は、私に仰向けに寝転がるように指示する。

ごろんと寝転がると、先生は私の首の下に自身の腕を入れ、力で起き上がらせようとする。自慢じゃないが体重が軽いほうじゃない私は、起き上がらなかった。

「力で人の身体を起き上がらせるのは大変です。だから、言霊の力を使います」

「言霊」という言葉は聞いたことがある。「言葉には魂が宿る」ともいうし、霊的な力があるのかもしれないけど、言葉を発するだけでそんな上手くいくものか。

話半分で聞いている私をよそに、説明を続ける先生。

「言霊にはいろいろな種類がありますが、いまは『カタカムナ』という短い言葉を使いましょう。吟じるように『カタカムナ』と唱えたあと、あなたに『さぁ、起き上がりましょうね』と声を掛け、首の下に入れている腕を持ち上げます。すると、簡単に起き上がらせることができるんです」

「カタカムナ」、【なるほどう】のホームページで見た言葉だな。なんて考えていたら、先生がさっそく言霊を唱え始めた。

「カァ~タァ~カァ~ムゥ~ナァ~……さぁ、起き上がりましょうね」

スッと、上半身が起き上がった。とても軽やかに。首の下に入れられている先生の腕の圧を全然感じなかった。私が起き上がったのは、「筋力」を使われたからじゃない!

「上達してくると、言霊を唱えなくてもできるようになります。相手の正中線を意識して、心のなかで『起き上がりましょうね』とか相手を気遣う言葉をかけると、同じことができますよ」

「正中線」とは、人体の真ん中、縦に伸びている線のことだ。もちろん目には見えない。だが、「アマナ心体操作術」では正中線を意識することが大事だという。

言霊を唱えないバージョンでも体験させてもらったが、見事に上半身が起き上がった。見えないなにかに引っ張られたかのように、本当にかる~く。不思議だ。

「寝転がっている人を力を使わずに起き上がらせるこの技は、介護や医療の現場でも活用できますよ」

そうだなぁ。力がいらないんだったら、介護する側の負担も軽減するし。すごい技じゃないか!

体験⑤氣と身体操作

最後に、先生は氣と身体操作の相乗効果について教えてくれた。

身体操作は、鼠径部(そけいぶ)で身体を動かしたり、腕と身体の動きを一致(挙動一致)させたりすることで、相手にこちらの動きを悟られないようにするらしい。例えば腕を掴まれているときにこちらの動きがバレると、相手はすぐに力を込めてしまう。だから「力がぶつからない身体操作」が必要で、そのためには身体の「抜き」も大切だという。

実際に、先生に腕を掴んでもらって「抜き」をやってみたが、腕の力を抜くことができない。「抜き」は「脱力」と違うから、ただ単に力を抜けばいいわけではない。力をゼロにしても、身体を動かせないと相手を投げ飛ばすことはできない。ううむ、難しい。

「気功術」と「身体操作」の両方ができるようになると、どちらか一方の技をかけるよりもさらに相手を腑抜けにできるという。その状態も体験してみた。

まず、先生の腕を両手でガッチリと掴む。足を前後にして、動かされないように踏ん張る。先生は、まず力で私を振りほどこうとするが、踏ん張る私は動かない。

次に、私の腕を先生が左指でちょんと触る。左回りの「緩む」渦だ。先生が腕を振ると身体が動いてしまった。

ここまでは気功術。これに身体操作が加わる。

もう一度、先生の腕を掴んで踏ん張る私。先生が左指で私の腕をちょんと触り、鼠径部で身体を回すと……吹っ飛ばされた。足が床を離れ、先生の腕を掴んでいることができないほど勢いよく動かされてしまった。

「氣に身体操作が加わると、さらに相手を腑抜けにできて、軽い動作で簡単に投げ飛ばせるんです」

身を守るのにパワーは不要。必要なのは「イメージ」と「抜き」。

こんな武術があるなんて……恐るべき「アマナ心体操作術」。

【なるほどう】の原則は「ほぼご自由に」

21時になり、稽古は終了。稽古終了後は、風を通すために開けられていた格技場の窓を手分けして閉め、帰り支度が整った人から解散。更衣室が格技場内にあるから、着替えもできる。

本日のお礼を伝えながら、【なるほどう】の生徒数や月謝について質問してみた。

「生徒は、最低でも2人、多いと5人ほど毎回来ますが、休会者も含めればもう少しいます。月謝はひと月3千円。高校生まではひと月1千円です」

「【なるほどう】の原則は『ほぼご自由に』ですので、稽古時間の何時に来ても、何時に帰っても大丈夫です。欠席も問題ないですが、誰が来るか把握したいので連絡は欲しいですね」

【なるほどう】のゆるい原則は、仕事で帰宅時間が読みづらい社会人にもありがたい。

「アマナ心体操作術」という不思議だけど効果抜群な技だけでなく、先生の人柄や参加しやすい体制も、生徒が集まる理由といえるだろう。

まとめ

「アマナ心体操作術」を体験してわかったのは、護身術はもちろん、日常生活にも活かせるということ。

相手を思う「氣」と「身体操作」を駆使すれば、動かない人を動かすこともできる。介護や医療にも役立つだろう。

ぜひ、興味がある人は体験稽古に行ってみてほしい。ほかの道場では味わえない不思議な体験をとおして、「氣」や人間の身体の奥深さを知り、日常生活に活かしていこう。